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  2. 布絵の魅力

私が41歳のとき、突然、夫が脳梗塞で倒れました。その直後、癌もみつかり、二つの病気との戦いが三年続きました。そして夫との別れ。残されたものの悲しみの葛藤、孤独感。それが、私という存在そのものに揺さぶりをかけてきました。愛する人を失うことは辛いことでした。

「生きていかなくては…」生きるために、なにかエネルギーが欲しいと思いました。そんな時、一枚の写真が、私を布絵を作るように動かしてくれました。そして、若い時、布絵作家の宮脇綾子先生の作品を見て、いつか私も作ってみたいという思いまで思い出させてくれました。

「私にも布絵が作れた」その時の感動は忘れることができません。生きることに苦しんでいた私に新しい道が始まったのです。

いつも見慣れていた野菜、果物、花、魚たちを綿密にデッサンすることから始めました。どんなに小さなものにも「いのちの輝き」があり、それが、私の心にときめきを与えてくれました。その感動を布を使って形にしていく挑戦は、私の創作意欲をかきたててくれました。

ひとつの作品ができるまで、考え、悩んで作っていきます。そして、何日もかけて糸でかがると、たくさんのいろいろな裂(きれ)が一枚の布になって完成になります。その時、この一枚になった布絵が、「あっというような」新鮮な輝きを私に見せてくれるのです。私はその時の布の輝きに出会いたくて、がんばってきたのかもしれません。